平成12年度は、脳内サイトカインの制御による術後侵襲反応の調節について検討した。すなわち、術前にサイトカイン拮抗物質であるステロイドを脳室内投与し、手術侵襲を加えたラットで、脳内と末梢臓器におけるサイトカイン産生の制御機構を解明し、その結果全身の窒素排泄とカテコールアミン排泄にはどのように影響するのかについて検討した。ラットの側脳室へのカテーテル挿入の手術侵襲によるラットの生存率は約90%であり、脳室内ヘカテーテルが確実に挿入できることも確認している。さらに、腹部5cmの正中切開を行った後、3時間後24時間後ともに生存率は80%以上で、2つの侵襲によるラットの生存率は実験モデルとして安定している。実験当初脳室内ステロイドの投与量を0.1mgとしていたが、脳内及び末梢臓器でのTNF-αの発現量に有意差を認めなかった。このため脳室内ステロイドを0.2mgとした結果、脳内及び末梢臓器のTNF-αmRNAとIL-1βmRNAの有意な低下を認めた。また血中のIL-6も抑制されたが、血中TNF-αは抑制されなかった。さらに尿中の窒素排泄量の低下を認めたが、尿中のカテコールアミン排泄には変化を認めなかった。尿中のカテコールアミン排泄量に有意差を認めなかったことから、脳内の他の制御機構を検討する目的で現在脳内オピオイドの測定を行っている。脳室内ステロイド投与量の決定、またカテコールアミン排泄に関しての検討に時間を要したため実験計画に遅延を認めているが、次年度はこれらの結果から他のサイトカイン拮抗物質を含めた、中枢神経における新しい侵襲反応を制御する戦略について考察する予定である。
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