Sprague-Dawleyラットの胸壁にウィンドウチャンバーを植え込み固定した。肺微小循環の観察は、レーザー共焦点顕微鏡を主体とした生体血流観測装置を6-100μm程度の血管の血流循環動態を解析できるように設計した。肺微小循環の可視化はFITCアルブミンで血漿部分を標識し血管径を測定した。人工酸素運搬体としてオキシヘモグロビン(OxHb)およびヘモグロビン内包型リポゾーム(Hbv)を用い、OxHb投与群、Hbv投与群、生食投与群に分け各々2mlずつ静注し経時的に心拍数、細小肺動脈径を計測した。 FITCアルブミン投与により肺微小循環が可視化され、肺胞毛細血管および血管径約60μmの肺動静脈を同定できた。細小肺動脈血管径はOxHb投与群では投与前に比べ投与直後94.8±7.4%、5分後95.3±20.5%、60分後91.2±11.2%となり径の縮小傾向を認め、またHbv投与群では投与直後97.1±11.0%、5分後98.8±21.2%、60分後95.8±5.3%で血管径に有意な変化は認めなかった。生食投与群では投与直後108.4±14.3%、5分後107.1±23.5%、60分後109.7±23%となり増大傾向を示した。また心拍数は人工酸素運搬体では投与前163±12分であったが投与直後220±20/分に上昇、その後1時間にわたり心拍数の増加が継続し、その後徐々に投与前値に復した。生食投与群では心拍数の変動は有意でなかった。 生体下で人工酸素運搬体を投与したところ、肺微小循環は人工酸素運搬体の種類により異なった反応性を示し、セル型人工酸素運搬体であるヘモグロビン内包型リポゾームでは肺微小循環に明らかな変化を与えず、分子状の酸素運搬体では肺動脈の収縮を起こしたことは、生理活性物質である内因性一酸化窒素と相互に関連していると考えられた。
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