前年度に引きつづき呼吸筋に誘発した緊張性振動反射が呼吸と胸腔内圧に及ぼす効果と深吸息により呼息筋に誘発したthixotropyが胸腔内圧と胸郭径(機能的残気量)に及ぼす効果に関する検討を行った。 安静呼吸の状態で前胸壁に吸息相で100Hzの振動刺激の投与を行い、吸息筋に緊張性振動反射を誘発しこのときの1回換気量と胸腔内圧の変化を記録し解析した。また安静呼吸の間に深吸息を行い、拮抗筋である呼息筋を引き伸ばすことで呼息筋にthixotropyを起こし、その後の数呼吸の胸腔内圧と胸郭径(機能的残気量)の変化を観察した。RESPITRACEを用いて胸郭径を測定したがこの測定方法による胸郭径の変化は機能的残気量の変化を反映するものとされている。 前胸壁への振動刺激の投与で1回換気量が増加し胸腔内圧の陰圧が強まった。この変化は吸息筋の反射性収縮によるものと考えられる。また深吸息により呼息筋にthixotropyをおこすと呼息筋のstiffnessが変化しその後の数呼吸で胸郭径(機能的残気量)が増え胸腔内圧の陰圧が強まった。 呼吸筋に誘発した緊張性振動反射と深吸息に基づく呼息筋のthixotropyによるstiffnessの変化は胸腔内圧の陰圧を強め、肺の膨張を促進させた。このような結果から胸壁への振動刺激の投与や深吸息は肺の切除後の呼吸リハビリテーションとしての臨床応用が期待される。 これらの研究結果については第41回日本呼吸器学会、第97回アメリカ肺会議で発表した。
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