本年度は主としてHSV-1716の経静脈的投与による安全性を多発性肺腫瘍マウスモデルを用いて検討した 1.HSV-1716の体内分布に関する検索 昨年度の研究にて肺腫瘍マウスモデルに対しHSV-1716を経静脈的投与することで有意な抗腫瘍効果を得ることができた。本年度は経静脈的に投与されたHSV-1716の各臓器内における分布について検討した。4x10^6pfuのHSV-1716を経静脈的に投与し、1ケ月後にSacrificeし肺、脳、脊髄、肝臓、腎臓、心臓、脾臓、皮膚および眼球を摘出した。抗HSV抗体による免疫組織染色にてウイルス局在を検索したが肺腫瘍内に中等度の染色を認めた以外、明らかな存在を指摘できなかった。HSV thymidine kinaseを目標としたPCR反応による各臓器内のHSV検索も実施した。肺腫瘍内に高度の発現を認めたほかは、脳組織および皮膚にてごく微量検出されたのみであった。上記より経静脈投与後のウイルス増殖はほぼ腫瘍選択的にて起こっていることが強く示唆された。 2.HSV中和抗体の存在の治療効果に対する検討 ヒト成人において抗HSV抗体の陽性率は高いことが知られており、HSV中和抗体の存在が治療効果に与える影響を検討した。弱毒野生株(HSV KOS-1)をBALB/Cマウスに腹腔内投与し免疫化を行った後にEFJ-62肺腫瘍モデルを作製した。HSV-1716を経静脈投与し、免疫群および非免疫群における抗腫瘍効果を比較した。両群ともコントロール群と比較し有意な抗腫瘍効果を得られたが、免疫群・非免疫群間においては有意差が認められなかった。少なくとも中和抗体がHSV-1716の経静脈的投与に対し大きくマイナスに作用しないことが示唆された。
|