新生児心臓手術では、心臓の未熟さの度合いの把握や、未熟な細胞の持つ心筋細胞としての能力を見極めることが重要である。ここで、心筋の興奮収縮連関に関与するイノシトール三燐酸(IP_3)のレセプターが、筋小胞体の膜上に存在するが、このIP_3レセプター遺伝子のマウス未熟心筋細胞における発現様式を探り、心筋細胞自体の未熟度との関連を明らかにすることを目的する。 IP_3のレセプター遺伝子の発現に関しては、心筋細胞でのType I geneの発現が、M.C.Moschellaらにより1993年に報告され、更に心筋の刺激伝導系細胞により多く認められるということが、L.Gorzaらにより同年に報告されている。しかし、発達段階における研究発表はまだなされていない。 平成12年度は、心筋細胞の発達段階における遺伝子の発現様式を検討を開始した。まず、Type IのIP_3 ReceptorのcDNAを鋳型としたジゴキシゲニンラベルのRNAプローブの作製を行った。 さらに、作製したRNAプローブによるIn situ hybridizationでの固定や反応時間等の条件設定の検討実験を行った。 その後、日令ごとの胎生期のマウスを取りだし、加えて日令ごとの新生児マウスを材料として、その心臓と脳組織(ポジティブコントロール)を摘出し、4%のパラホルムアルデヒドで固定し、パラフィン包埋を行い、5μmの厚さの切片を作製した。これらに対し、免疫組織化学、RNAに対してのIn situ hybridizationを行った。12日令〜16日令の胎児マウスと生後0〜7日までの新生児マウスの標本における結果では、ポジティブコントロールの脳組織では、成長とともに陽性率が上昇した。これに対し、心筋では幼弱細胞での陽性率が高いと考えられる結果であったが、現在その発現量の定量化について検討中である。
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