冠状動脈バイパス術53例のうち手術当日から第6病日まで24時間毎に連続ホルター心電図記録を行い良好な記録の得られた16例を対象に得られた心電図記録から発作性心房細動(PAf)を検出し、PAf症例群(P群)と非PAf群(N群)に分類した。次いで7日間の全心拍のR-R間隔を求め、これより1日ごとのSDNN(正常洞調律R-R間隔(N-N間隔)の標準偏差(SD))を算出しPAfと心拍変動の関係について検討した。さらに5分毎のR-R間隔を最大エントロピー法(MEM)による成分解析を行い、高周波成分(HF)と低周波成分(LF)を算出。HFを副交感神経系、LF/HFを交感神経系活動の指標とし、PAf発作30分前からの変化を解析した。 SDNNはN群11例において、50〜61.8msで変動を認めなかったが、P群においては50〜95msの変動が見られ、PAf発症の第2、4、6、病日においてN群に比べ上昇を認めた。特に第2病日では81.0±35.5ms、対50.0±13.6ms、0.05>p、と統計上有意な上昇を認めた。PAf発症前の自律神経系の変化は、LF/HFで発作30、15、5分前でそれぞれ1.72±2.42、3.81±5.91、1.65±1.16であり30分前に比べ15分前で統計上有意な上昇を認めた。HFは発作30、15、5分前て94.4±125.7、75.1±82.7、138.5±167.4と30分前に比べ5分前で統計上有意な上昇を認めた。【総括】CABG後のPAf発症では心拍変動の増大が認められ、特にPAf発作前には、先行した交感神経活動の亢進が生じ、これに引き続いた発症直前の副交感神経活動の亢進が認められ、PAf発症に自律神経系の関与が示唆された。現在、症例を重ねさらなる検討を行っている。
|