研究概要 |
まず初めに、カイニン酸投与法を検討した。従来、ラットに対してカイニン酸を単回投与していたが、10mg/kgでは急性期辺縁系発作重積が1/4程度の個体にしか誘発されず、また12mg/kgでは急性期辺縁系発作重積時に1/2程の個体が死亡していた。そこで、5mg/kgのカイニン酸を1時間ごとに投与することにした。この投与方法により、はぼ全例で充分な急性期辺縁系発作重積が誘発され、死亡する個体もほとんど無くなった。この様な方法で得られたラットも、従来のカイニン酸投与法で得られたラットと同様に、慢性期に自発性辺縁系発作を起こす事が確認できた。すなわち、カイニン酸複数回投与法は、自発辺縁系発作を起こすラットを効率よく作製できる可能性が示唆された。 次に、このようなカイニン酸ラットにおける2つの抑制性神経受容体、すなわち中枢性べンゾジアゼピン受容体およびアデノシンA1受容体の変化を、[^3H]Ro15-1788(flumazenil;FMZ)(中枢性ベンゾジアゼピン受容体拮抗薬)と[^3H]8-cyclopentyl-1,3-dipropyl-xanthine(DPCPX)(アデノシンA1受容体拮抗薬)を用いたin vitro autoradiographyにより検討した。同時にCresyl violet染色により神経細胞脱落を初めとした組織学的変化も検討した。すると、2つの抑制性神経受容体のいずれも、海馬歯状回で結合能が上昇している事がわかった。またアデノシンA1受容体は、海馬CA3領域でも結合能が上昇している事がわかった。さらに海馬CA1の錐体細胞が脱落している事がわかった。 抑制性神経受容体の結合能上昇は、海馬における過度の興奮性に対する反応性変化の可能性が考えられた。
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