研究概要 |
カイニン酸複数回投与によりてんかん源性を獲得したラットを用い、2つの主要な抑制性神経受容体である中枢性ベンゾジアゼピン受容体およびアデノシンA1受容体の変化を、[^3H]Ro15-1788(flumazenil ; FMZ)(中枢性ベンゾジアゼピン受容体拮抗薬)と[^3H]8-cyclopentyl-1, 3-dipropyl-xanthine(DPCPX)(アデノシンA1受容体拮抗薬)を用いたin vitro autoradiographyにより検討した。同時にCresyl violet染色により神経細胞脱落を初めとした組織学的変化も検討した。 すると、中枢性ベンゾジアゼピン受容体およびアデノシンA1受容体のいずれの結合能も、海馬歯状回において上昇している事がわかった。またアデノシンA1受容体は、海馬CA3領域でも結合能が上昇している事がわかった。さらに海馬CA1の錐体細胞が脱落している事がわかった。このような脳内の主要な抑制性神経受容体の結合能が海馬において上昇している事は、海馬、特に歯状回における苔状線維発芽による過度のグルタミン酸放出およびこれに伴う興奮性亢進に対する反応性変化の可能性が考えられた。 このことは、過度のグルタミン酸放出がてんかん源性の本質であり、抑制性神経受容体の内、少なくとも中枢性ベンゾジアゼピン受容体およびアデノシンA1受容体のいずれも、てんかん源性には直接的な関与はない可能性を強く示唆している。 今後は、グルタミン酸過剰放出のメカニズムを中心に研究を進めてゆく予定である。
|