研究概要 |
(目的)研究計画調書,研究費補助金交付申請書に記したごとく,悪性脳腫瘍におけるミスマッチ修復遺伝子の変異をスクリーニングするため,平成12年度は以下の解析を行った.(対象と方法)過去10年間当脳神経外科学教室にて治療した悪性頭蓋内腫瘍の以下の3群,計32例を対象とした.(1)15歳以下の小児18例,(2)15歳から25歳までの若年者8例,(3)大腸ポリープまたは癌を合併し,Turcot症候群type 1の疑われる成人6例(下垂体腺腫4例,聴神経腫瘍,大脳星細胞腫各1例).各々の腫瘍よりゲノムDNAを抽出,quasi-monomorphic markerであるBAT-26のプライマーを用いて目的の領域をPCR法にて増幅,ポリアクリルアミドゲルで分離した後,銀染色を行った.陽性コントロールとして,すでにマイクロサテライト不安定性が確認されている上行結腸癌を用いた.(結果)陽性コントロールは混入した正常細胞由来のバンドに加えて,腫瘍由来の修復エラーに由来する短いバンド,計2本を示した.しかし,検討した32例すべてにおいては正常細胞と同長のバンド1本しか認めなかった.(結論)少なくとも今回解析した中にはマイクロサテライト不安定性,すなわちミスマッチ修復遺伝子の変異が示唆される症例は存在しない.(考察と今後の展開)今回の研究から,小児あるいは若年発症の悪性脳腫瘍におけるミスマッチ修復遺伝子の関与は低いと推察される.しかしLuengらの報告(Am J Pathol 153:1181-1188,1999)では,40歳以下の青,壮年期発症例を主な対象としており,今後は対象年齢を40歳以下まで引き上げて解析する必要がある.
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