研究概要 |
EMMPRIN(CD147)は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する膜蛋白で、通常癌細胞に発現し、線維芽細胞、血管内皮細胞からのMMP-1,2,3の産生を刺激する。また、トリの血液脳関門(BBB)特異的抗原HT7のヒトhomologueである。平成12年度は、EMMPRINはヒトglioma組織で高発現し、その程度は組織学的悪性度と相関すること、in vitroではglioma細胞は発現したEMMPRINを介して脳由来線維芽細胞からのMMP-2、MT(membrane type)1-MMPの産生を刺激し、それは抗EMMPRINモノクローナル抗体によって阻害されることを示した。また、免疫組織化学的にEMMPRINの発現は、正常脳では血管内皮のみに限られ、glioblastoma multiformeで増生した血管内皮では陰性であった(Int.J.Cancer:88,21-27(2000),Cancer Letters 157(2000)177-184)。 続いて、EMMPRIN活性部位アミノ酸配列を持つ合成ペプチドによって、glioma細胞による線維芽細胞からのMMP産生刺激の抑制を検討している。活性部位配列を持つペプチドによってMMP-2及びMT1-MMPの両者ともdose-dependentに抑制されたが、持たないペプチドでは全て抑制されなかった。さらに、グリオーマ細胞株、脳由来線維芽細胞の共存による浸潤能の増強と、抗EMMPRINモノクローナル抗体及び活性部位ペプチドによる機能抑制効果を検討し、脳腫瘍におけるEMMPRINの役割解析と治療における可能性を探っている。
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