研究概要 |
A.脳腫瘍の悪性度に関する遺伝子診断法の確立 脳腫瘍の腫瘍型に応じてダブルターゲツトFISHを行い、染色体・遺伝子変化につき判定する遺伝子診断法を平成12年度に確立した. (1)グリオーマ:グリオーマの解析によりoligodendroglial tumor(OL)において1番染色体短腕(1p)および19番染色体(19q)の欠失が診断的マーカーとなりうることを示した.さらにこれらのOL患者の予後,化学療法感受性との比較を行い,1p,19qの欠失を有する群(combined loss ; CL群)とそうでない群(no loss ; NL群)で,予後と化学療法感受性に差異のあることを示した.また,10番染色体長腕(10q)と17番染色体短腕(17p)の欠失状況が予後の決定因子になりうる可能性を見出した.すなわち予後のよいCL群の中にも,少数の予後不良例が存在し,それらの症例では1pと19qの欠失に加えて,10qとp53遺伝子の存在する17pの欠失が見られた.これらの遺伝子異常検索を日常の臨床に還元,化学療法の選択の指標とした. (2)髄膜腫:70例の髄膜腫(MN)症例において,遺伝子診断法を適用した.MNの悪性化には1pの欠失が関わり,この欠失は病理組織のWHO grade分類と統計学的に有意に相関することを示した.腫瘍の増殖能を反映しているとされるMIB-1染色の結果とも有意に相関した.このほかに,10q,14qの欠失が悪性化に関与することを見出した.病理学的に良性(WHO grade I)と診断された43例のうち7例(16%)で1pの欠失を見出し,このうち2例はすでに再発を確認している. B.第1番染色体短腕、1p36領域の癌抑制遺伝子の解析 OLでは15例において1pの染色体欠失地図を完成させ,共通欠失領域は1p32よりテロメア側に存在することを明らかにした.MNでは15例において1pの詳細な染色体欠失地図を完成させ,共通欠失領域は1p32-34,1p36の2箇所にわたって存在することを示した.
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