研究概要 |
昨年まで我々は下垂体細胞・腺腫における分泌顆粒の細胞内輸送を調節する因子としてRab3 isoformに注目し、その細胞内局在について検討し、ある程度の成果を上げることができた(Tahara S,et al.Mod Pathol 12,627-34,1999)。しかし、下垂体細胞の分泌顆粒の開口分泌に関与している因子はRab3 isoformの他にも、NSF-SNAP-SNARE系蛋白が知られている。今年度は、これらの蛋白のうち、vesicle SNAREであるsynaptobrevin/VAMP(vesicle-associated membrane protein)に注目し、手術によって得られた下垂体腺腫サンプルを対象として、NSF-SNAP-SNARE系の発現を免疫組織学的手法を用いて検討した。対象となる腺腫は4%paraformaldehydeにて固定し、パラフィン切片とした。使用した抗体は抗VAMP-1抗体(Santa Curz社)であり、ABC法にて免疫染色を行った。結果としては、下垂体腺腫に広くVAMP-1の発現が観察されたが、特にGH産生腺腫(GHoma)の89%に高率に陽性を示した。さらにGHomaにおいては陽性細胞の比率が高く、また細胞内局在においても細胞膜周囲のみならず、細胞質にも強く発現していた。以上の様にsynaptobrevin/VAMPは一般的に分泌顆粒の多い、Ghomaに高率に発現しており、分泌顆粒を介してのホルモン分泌制御に関与していることが示唆された。またsomatolactotrophの細胞株であるGH3細胞においてsynaptobrevin/VAMPの発現が認められたことと併せ興味深い。来年度は他のNSF-SNAP-SNARE系蛋白について検討すると共に、Rab3蛋白との関連についても考察したい。
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