PKC特異的阻害剤(カルホスチンC)によって誘導されるグリオーマ細胞のアポトーシスについて(特にそのミトコンドリアでの影響に関して)次の諸点を検討した。 1.グリオーマ細胞株のPKC特異的阻害剤(カルホスチンC)作用時におけるBaxのミトコンドリア膜への移行およびhomodimer形成の有無を、抗Bax抗体による免疫沈降法ならびにイムノブロット法にて調べた。その結果、Bax蛋白の細胞質からミトコンドリアへのtranslocationは、カルホスチンC投与後1時間で認められ、それが経時的に増加した。また、ミトコンドリアでのBax-homodimerの形成はtranslocationより遅く、約6時間後に認められ、約8時間でピークに達した。続いて、汎カスパーゼ阻害剤であるz-VAD.fmkは、baxのミトコンドリア膜への移行ならびにhomodimer形成を抑制しなかった。またミトコンドリアF0-F1プロトンポンプ阻害剤であるオリゴマイシンは、baxのミトコンドリア膜への移行に関して影響しなかったが、homodimer形成は軽度抑制した。 2.カルホスチンC作用時におけるBaxのミトコンドリア膜結合に対するアルカリ抵抗性獲得について調べた(イムノブロット法)。その結果、カルホスチンC誘導アポトーシスの際、Baxはミトコンドリア膜に移行し、更にそこでアルカリ抵抗性を獲得した。z-VAD.fmkはこのBaxのアルカリ抵抗性獲得を阻害しなかった。
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