<目的> 関節軟骨傷害に対する自家骨軟骨移植術は感染の危険性が低く、また、移植軟骨片には軟骨下骨の早期骨癒合により移植片の安定性が保持されるなどの長所がある。しかし、自家軟骨を採取するため修復できる大きさに限界がある。そこで、大きな欠損に対する自家骨軟骨移植術を開発するため、移植する軟骨片の大きさと数の変化によって、どのような欠損を修復できるかどうかを動物実験で検討した。 <方法> 軟骨下骨を貫通してくり抜いて関節軟骨全層欠損を作成したのち、摘出した骨軟骨片をそのまま戻し欠損部に大きさと形が一致した群(I群)、くり抜いた骨軟骨片を縦に半分に割った後に戻し不十分な移植を行った群(II群)、くり抜いて欠損のまま放置した群(III群)の3種類の移植術モデルを作成し観察した。 <結果> I群では他の群と比較して極めて良好な軟骨修復が得られた。また、欠損部を一部残した状態での治療のモデルであるII群でも、欠損部を放置したIII群より良好な結果であった。しかし、IおよびII群とも組織学的には移植した軟骨は周囲の軟骨より厚く、細胞数も増加しており、移植された軟骨の構造は正常とは異なっていた。 <考察および新たな知見> 自家骨軟骨移植では、組織学的にも免疫組織学的にも硝子軟骨の変性は見られず、有効な方法であることを見出した。また、移植に際しては、できるだけ大きさや形が類似している骨軟骨片で修復することが重要と考えられた。しかし、移植した軟骨は周囲の軟骨より厚く、細胞数も増加しており、移植された軟骨の形態学的構造が異なることを見出した。骨軟骨移植術に際して軟骨細胞数が増加する因子を解明することにより関節軟骨の再生をはかることができることが示唆された。
|