本年度は、ラットを用いて、骨芽細胞は存在するが骨細胞は存在しない状態の骨を作成した。まず、8週齢のラット脛骨骨幹部をメスにて切り出し、約60℃の生食水に浸けて骨細胞を死滅させた後に、骨を体内に戻して創外固定器を用いて固定した。その後、骨癒合が得られるか定期的に観察したが、感染を併発し骨癒合が得られない例が頻発したので、本方法で作成することは断念した。続いて骨を切り出さずに液体窒素を骨に塗布する方法を試みた。ラット脛骨を露出し、液体窒素に浸けた綿棒を骨に15秒間、計3回接触させた。この方法で髄内の温度が-30℃以下まで低下することを確認した。コントロールでは液体窒素の代わりに生食水を使用した。処置後、2週、4週、8週、12週、16週にカルセインて二重標識ラベルを行い骨を摘出した。硬組織標本を作製し、皮質骨内の骨細胞数と骨形成の状態を観察した。2週の骨の骨内膜面では二重標識ラベルが全く消失し、綿棒を接触させた部位の皮質骨で、骨細胞を含まない骨小腔が顕著となった。4週の骨では骨内膜面の二重標識ラベルはコントロールと同程度に回復したが、綿棒を接触させた部位の皮質骨で骨吸収が著明に亢進し、また骨外膜而で線維性骨の形成が著明となった。この傾向は8週、12週にも認められた。16週の時点で骨外膜面の線維性骨が消失し、コントロールと同様の所見を呈するようになった。8週齢のラットでは骨細胞の死滅と共に、骨吸収の著名な亢進が生じるため、力学的負荷の作用を観察するのは困難と思われた。今後は、8カ月齢のラットで同様な実験を繰り返し、力学的負荷を加える時期について検討する予定である。
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