研究概要 |
今年度は急性期の実験を主体におこなっている。われわれの開発した固定装置を用いて成猫の脊椎を把持したまま、神経組織のみを残す形で脊椎構成要素をある一定の長さですべて切除している。しかるのちに残存する脊椎を近接する形で脊柱の短縮操作を脊髄機能モニタリングのもとでおこなった。一椎体の切除による脊柱短縮操作では硬膜管に趨壁形成を認めるものの脊髄神経には圧迫病変を形成せず、神経組織は問題なく上下の脊柱管内に完全に収納された。操作中、脊髄神経の誘発電位には異常を認めず、手術終了後、摘出した脊髄神経の病理組織にも何も異常は認めなかった。二椎体以上の切除による脊柱短縮操作では硬膜管はたわみを生じ、脊髄神経は変形し、残余する椎弓による圧迫で脊髄神経は損傷された。この問題解決のために切除椎体の中枢と末梢に十分椎弓切除を追加したところ神経組織は変形するものの圧迫病変は形成されず、脊髄誘発電位ならびに病理組織に異常は出現しなかった。過去の報告にみられるように脊柱の矯正手術の際に脊髄神経は一定の牽引力に対し容易に損傷をきたし,その機能は破綻することが知られているが、逆に短縮操作に対しては比較的抵抗力を示すことが本実験で初めて明らかにされた。次年度ははたして変形した脊髄神経が長期にわたりその機能を正常に保つことができるのか否かを慢性動物実験を行い確認する予定である。慢性実験で安全性が確認された場合、臨床症例の手術への応用を試みる予定である。 なお、急性実験の概要を15th International Congress of Clinical Neurophysiology(May16-20,2001,Buenos Aires,Argentina)で発表予定である。
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