1.同種骨移植による感染性疾患の伝播や細菌汚染を克服する新しい方法として、マイクロ波照射による加温処理法を確立するのために、マイクロ波照射による骨の加温特性および骨内部温度の均一化につき検討した。 2.【方法および結果】成牛(和牛)大腿骨から骨頭を切離し、約1ヵ月間-80度に冷凍保存した後、表面から骨頭中心部に向かって約30mm(骨頭中心)および20mm、10mm、3mm(骨頭表面)の各深さの穴を開け、光ファイバー温度計センサーを挿入した。〈実験1〉牛大腿骨頭を容器に入れ、500Wのマイクロ波加熱装置で加温し温度を計測すると、骨頭は中心より加温されたが、骨頭中心が80℃に達したとき各深さの温度は不均一であった。〈実験2〉そこで電力調節が可能なマイクロ波加熱装置を作製し、骨頭中心温度を80℃に制御して各深さの温度を計測した。骨頭中心は約15分で80℃に到達したが、骨頭中心を加温し続けても各深さの温度は80℃に達しなかった。〈実験3〉そこで、容器の底に生理食塩水を入れ加湿し、骨頭中心温度を80℃に制御して骨頭の各深さの温度を計測した。生理食塩水5mlを入れ加湿すると、各深さの温度をほぼ80℃に近づける事ができた。〈実験4〉成牛大腿骨から皮質骨のみを切離し、容器の底に生理食塩水を入れ加湿し、全長の中心温度を80℃に制御して4ヵ所の温度を計測した。生理食塩水5mlを入れ加湿することで、皮質骨も同様に各点の温度を80℃に近づける事ができた。 3.【考察】マイクロ波照射加温処理法は骨を内部より加熱する事が出来る新しい方法であり、電力を制御すれば中心温度は制御可能であった。しかし骨頭表面は水分が失われ、温度が上昇しない。そこで容器内に蒸気を発生させ加湿すると温度は上昇し、海面骨、皮質骨ともに80℃に近づける事ができた。 4.今後さらに海面骨、皮質骨の混在する骨の骨内部温度の均一化を検討する。
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