研究概要 |
グルタミン酸受容体チャネルは中枢神経系の主要な興奮性シナプス伝達を担う受容体であるばかりでなく,脳虚血,低酸素脳症,ニューロパシックペインとも密接なつながりがあることが知られている.このうちAMPA型は,従来から報告されている非カルシウム透過性の受容体のほかに高いカルシウム透過性を持つ受容体が存在することが近年明らかとなっている.筆者はAMPA受容体の4種類のサブユニット(GluR1, GluR2, GluR3, GluR4)をコードするcDNAを組み込んだアデノウィルスベクターを作製し(Molecular Brain Research 50 ; 91-99, 1997に論文発表),ラット褐色細胞腫由来の細胞株であるPC12細胞に感染させることにより機能的受容体を発現させ,ホールセルパッチクランプ法により麻酔作用を持つキセノンがAMPA型グルタミン酸受容体にどのような効果を及ぼしているか,電気生理学的に解明を試みた.組み換えアデノウィルスベクターをPC12細胞に感染させ,2日間インキュベートした細胞にパッチ電極をアプローチしAMPA受容体のアゴニストであるAMPAを投与し,ホールセルパッチクランプ法を用いてその電気生理学的応答を記録した.このとき細胞外液中にキセノンをバブリングすることにより還流投与しAMPA受容体応答に与える効果を記録解析した.キセノン投与は,カルシウム透過性及びカルシウム非透過性AMPA型受容体応答の双方に対して影響を与えないことが確認された.さらに,NMDA型グルタミン酸受容体チャネルについても同様の手法を用いてキセノン投与による効果を検討した.NMDA型受容体のサブユニットであるNR1とNR2Bを共発現させた細胞において,キセノンはNMDA受容体応答を70%抑制することが判明した.
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