研究概要 |
これまでに敗血症と各種麻酔薬に関する研究で,敗血症時の鎮静に有用な麻酔薬を指摘している.今回,敗血症と体温の関係に注目し,敗血症時の低体温による症状の悪化を防止する対策として,また,低体温療法時の最大の合併症である感染を防止する対策として静脈麻酔薬(ケタミン,プロポフォール)の応用を検討する目的で,循環・呼吸動態に及ぼす,低体温と感染に対する静脈麻酔薬の影響についてラットを用いて検討した.体重300-350gの雄ラットを対象に,まずネンブタールの腹腔内投与により麻酔した後に気管切開を行い,人工呼吸管理とする.その後静脈麻酔薬(プロポフォール)にて鎮静させた後,エンドトキシンを静脈内投与し,体温を32度まで低下させた.その低体温施行前後,エンドトキシン投与前後での循環・呼吸動態の変化を経時的に検討した.その結果,低体温施行したラットは,大多数が低体温中に死亡したのにもかかわらず,プロポフォールを投与した後に低体温にした群では有意に少ないことが判明した.また,体温正常である群では,プロポフォール,対照群とも死亡したラットはいなかったため,エンドトキシン+低体温が生体内には悪影響を及ぼし,静脈麻酔薬であるプロポフォールが,それを抑制していることが示唆された.今後,もう一つの静脈麻酔薬であるケタミンに関しても検討を行い,さらに,エンドトキシン+低体温におけるサイトカインの変動も検討していく予定である.
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