本校の細胞内カルシウム測定装置のメンテナンスがなされておらず使用できなかったことと、ラットの海馬の錘体細胞の初代培養のテクニックが当初なかったことより、まず始めにラットの褐色細胞腫PC12細胞をNGFで分化させたときに伸びてくる神経突起の先端に存在する成長円錐のアクチン繊維による形態変化、filopodia、lamellipodiaに麻酔薬が与える影響を調べることから、実験を開始した。PC12細胞はDMEMに10%馬血清と5%牛胎児血清を加えたもので維持し、実験を行う時には、poly-l-lysineでコートしたスライドガラス上に移し、分化を誘導するには培養液の血清を2.5%馬血清のみに減らしたものにNGFを50ng/mlの濃度で加えたものを一日置きに入れ替えることによって行った。7日たって十分に分化したところで培養液にイソフルレンをPBSに飽和させたものを0.3mMになるように加え、5分たったところで4%ホルムアルデヒドで固定し、rhodamine-labeled phalloidinで染色し蛍光顕微鏡および共焦点レーザー顕微鏡で観察した。イソフルレンを加えた細胞では、コントロールに比べfilopodiaが短縮した細胞が多い傾向がみられた。今後生細胞で経時的に形態の変化を観察、記録する系を確立し今回の結果を確認するとともに、当初の目的である海馬の錘体細胞の初代培養細胞の樹上突起スパインにおける麻酔薬の効果に実験をすすめる予定である。
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