研究概要 |
好気的条件下で揮発性吸入麻酔薬は肝細胞のグルコースと乳酸の放出を促進させる.このとき肝細胞内のグリコーゲン量が減少することから,揮発性吸入麻酔薬はグリコーゲン分解と解糖を促進させるものと考えられる.しかし,嫌気的条件下での影響はまだ明確でない.今年度に行った実験では,より生体に近い形態で,揮発性吸入麻酔薬が肝細胞の糖代謝に及ぼす影響を調べるために,コラゲナーゼ還流法で分離したラットの培養肝細胞を用いて実験を行った. 実験はグルコース,インスリン,デキサメサゾンを含むL-15培地で24時間培養し,グルコース5mMを含むHanks液に培地を置換後,37℃で窒素および揮発性吸入麻酔薬であるハロタンとともに2時間混和した.ハロタンは上清中の濃度が0〜1000μMになるように気化器を用いて調整した.上清中のグルコース濃度,乳酸濃度とpH,肝細胞内グリコーゲン量を測定した.その結果,上清中のグルコース濃度,乳酸濃度,pH,肝細胞内グリコーゲン量にハロタンは濃度依存性の有意な影響を及ぼさなかった. 以上のことより,好気的条件と嫌気的条件ではハロタンは,肝細胞の糖代謝に及ぼす影響が異なることが示唆された. 従って次年度では,麻酔薬の種類と濃度を変えてさらに調べるとともに,揮発性吸入麻酔薬が肝細胞内のCa濃度変化に及ぼす影響を,蛍光試薬を用いて画像解析を行って調べる予定である.
|