研究概要 |
イヌの摘出脳血管を用い,圧負荷群(50mmHg,20分間)と対照群(圧非負荷群)とに分け,内皮依存性弛緩反応に差があるかを検討し,さらにその機序についても調べた。 KCl(30mM)とほぼ同程度の収縮を起こすUTP(Uridine 5'-triphosphate,10^<-5>または3×10^<-5>M)で脳血管を収縮させ,インドメタシン(10^<-5>M)で前処置後,ブラジキニン(10^<-10>〜10^<-6>M)による弛緩反応を検討した。圧負荷群では対照群と比較して,ブラジキニンによる弛緩反応は抑制され,圧負荷により脳血管のNOを介した内皮依存性弛緩反応が抑制されることがわかった。 次にSOD (superoxide dismutase)で,圧負荷による内皮依存性弛緩反応の抑制がどのように修飾されるかを検討した。圧負荷群では,SOD前処置によりブラジキニンによる弛緩反応の抑制が回復する傾向にあった。ただし,対照群でも同様にSOD前処置で弛緩反応が回復(増強)する傾向がみられた。 マグヌス装置を用いた研究では,装置内を常に酸素94%+二酸化炭素6%で通気しながら実験を行っており,このような条件下では装置内でsuperoxideが生成される可能性も考えられる。以上のことより,SODの効果の説明として,(1)装置内で生成されたsuperoxideを抑制したことによるものであり,圧負荷による内皮依存性弛緩反応の抑制にはsuperoxideは関与していない,(2)圧負荷によってsuperoxideは生成されたが,前処置のSODで対照群,圧負荷群ともに十分superoxideが除去された,の2通りが考えられる。 現段階では,圧負荷による内皮依存性弛緩反応の抑制の機序にsuperoxideが関与しているかどうかは不明である。血管組織中のsuperoxideの量を圧負荷前後で測定し,superoxideの生成が確認できれば機序を解明する手掛りとなるかもしれない。また,麻酔薬の影響についてもまだ十分検討できておらず,今後の課題としたい。
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