カリウムチャネルは細胞の興奮性の調節や静止膜電位の維持に重要な役割を果たしており、1980年代の中頃にクローニングされてから、その構造、機能についての研究は飛躍的な発展をとげている。麻酔薬が心筋細胞などの電位依存性Kチャネルへ及ぼす作用に関する研究は、数多くおこなわれている。しかし神経細胞のKチャネルへ及ぼす作用に関しては、まだ明確になっていない部分が多い。そこで、神経細胞の興奮性、神経活動電位の反復発火にとって重要な遅い後過分極に関与する、コンダクタンスの小さいCa依存性Kチャネル(以下SKチャネル)と麻酔薬の関係を調べている。SKチャネルに及ぼす吸入麻酔薬の影響については、昨年報告された。(Eur J Pharmacol 28;395(2):95-101)しかし、静脈麻酔薬の影響についてはまだ報告がなく、また単一チャネルレベルの報告もない。 マウスの脳海馬錐体細胞のプライマリーカルチャーを行い実験中であったが、安定して供給することが難しく、培養細胞系のPC12h細胞でも同様な実験が行えることを見いだし、培養細胞系で実験をおこなっている。また、SKチャネルはコンダクタンスが10pSと小さいため、電気ノイズが少しでも大きいとチャネルを観察することが出来ない。その微小ノイズを落とすことや機械類の調整など実験系の立ち上げに労力を費やしたが、システムを確立し単一SKチャネル電流を観察出来る状態となった。詳細はまだ検討中であるが、SKチャネル電流はあまり静脈麻酔薬単独では大きな影響を及ぼされないような傾向である。
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