筋弛緩薬は筋弛緩作用の他に循環や自律神経系に対してもさまざまな作用を持っていることが知られている。その原因として交感神経への直接作用やカテコールアミンの再取り込みの阻害などが報告されているがその詳細な機序は未だに明らかにされていない。 今回は、シナプス間隙においてカテコールアミンの再吸収に関与するノルアドレナリントランスポーターに焦点をあて、(1)筋弛緩薬(パンクロニウム、ベクロニウム、アトラクリウム)のノルアドレナリントランスポーターに対する作用を副腎髄質細胞への^3H-ノルアドレナリンの取り込みにこれらの筋弛緩薬がどのように作用するかを検討した結果、筋弛緩薬パンクロニウムは臨床濃度において抑制するが、ベクロニウム、アトラクリウムは抑制しないという結果を得た(Anesthesiology Vol91A1049 1999)。(2)さらにこれらの阻害形式がどのようなものなのかを検討した結果、筋弛緩薬パンクロニウムは非拮抗型の阻害形式を示すことも確認している(1999年度米国麻酔会議にて発表)。現在は、パンクロニウムの作用部位がデシプラミンやケタミンの阻害部位と同じなのかどうかを、^3H-デシプラミンの結合実験を行い、それらに対する筋弛緩薬(パンクロニウム)がどのように阻害するかを確認しており、(3)その部位が膜貫通領域の何番目にあたるのかを詳細に探すために、ノルアドレナリントランスポーターとグルタミン酸トランスポーターの間でキメラRNAを構築し、それをアフリカツメガエル卵母細胞系に発現させ、それに対する筋弛緩薬の抑制効果を比較して筋弛緩薬のノルアドレナリントランスポーターへの作用部位を明らかにしてその作用機序を探ろうと考えている。
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