精巣のセルトリ細胞間のタイト・ジャンクション(TJ)はblood-testis barrier(BTB)として機能しており、精細管内を精子形成に適した環境に保っていると言われている。近年BTBを形成する分子群の一つ、膜蛋白クローディン11/OSP(Cld-11)が重要な役割を果たしていることが報告されている。我々はまず、本学医学研究科・月田承一郎教授より供与されたCld-11に対するポリクローナノ航体を用いた免疫組織化学的手法と、ノーザン法を併用していくつかの哺乳類でのCld-11の発現を確認した精細管の発達に伴い、BTBが完成してくるといわれる生後2週間に一致してCld-11の発現量が増加するマウスに対し、モノモットにおいては生後間もない時期からCld-11は強く発現しており、種間の相違が見られた次に、男性不妊患者から得られた精巣組織において実際にCld-11の発現・分布に変化が見られるかどうかを検討した。2000年2月から2001年10月にかけて当科にて施行した精巣生検、精巣内精子採取術より得られた男性不妊患者20例の精巣組織を用いて、その発現・分布について免疫組織学的に検討した。セルトリ細胞の基底膜側に濃縮するものを正常パターンとし、それ以外のものを異常パターンとした。異常パターンが5例に見られた(分布異常4例、発現減弱1例)が、発現の喪失は見られなかった。正常群と異常群との血中FSH値、max Johnsen's scoreはそれぞれ12.2±11.4mlU/ml、28.5±10.7mlU/ml、8.1±1.9、4.0±2.1であった。Cld-11の分布の異常が造精機能障害を反映している可能性が示唆された。以上の研究成果について、第23回関西アンドロロジーカンファレンス(平成13年9月29日、大阪)にて発表を行い、第90回日本泌尿器科学総会(平成14年4月20日、東京)においても発表の予定である。また現在雑誌投稿準備中である。
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