研究概要 |
平成12年度において、まずマウス前立線癌モデルの作成を行った。すなわち、ヒト前立線癌株であるLNCaP,PC3の細胞浮遊液をヌードマウスの前立腺に注入して、正所性移植を試みた。これにより、以降In vivoにおける治療実験はこのモデルを用いることとした。続いて、In vitroにおいてLNCaP,PC3に対する各種制癌剤の殺細胞効果を評価した。培養プレート中で細胞浮遊液に制癌剤を添加後72時間培養、細胞活性をMTT asssayにより測定した。その結果、ホルモン抵抗性癌株であるPC3はホルモン感受性株であるLNCaPに比して概ね薬剤感受性が低下していた。一方、培養開始時に高電圧パルスを負荷して同様に細胞活性を検討したところ、両株ともにBLM,CDDPの殺細胞効果は有意に増強していた。正所性移植モデルを用いたin vivo実験においても、BLM,CDDPの腹腔内投与し、その直後開腹により露出させた前立腺へ高電圧パルスを負荷したところ、制癌剤単独投与時と比較し生存率は有意に改善し、肺転移数も顕著に少なかった。マウスの高電圧パルス負荷に伴う副作用は認められなかった。以上から、前立腺癌において癌病巣に高電圧パルスを誘導可能であれば、制癌剤の作用が増強可能であることが判明した。このことより今後、(1)磁気刺激を用いて組織内電流を誘導する方法の確立、(2)制癌剤の代わりにgeneを用いるnon-virus vectorによる遺伝子治療を検討する予定である。
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