本年度は、ずり応力(シェアストレス)を移行上皮に負荷する予定であったが、当初、予定していたシェアストレス負荷機器が浮遊細胞用とのことであったため、すぐに利用できるストレッチストレス負荷機器を用いた。また、移行上皮としては、正常な移行上皮を用いる前段階として、移行上皮由来の膀胱癌細胞株T24を用いた。今回は、ストレッチストレス負荷によって、発現の変化する遺伝子の中に、既知のものであり、すでに私共の研究室でcDNA用primerを持っている各種の増殖遺伝子や、受容体遺伝子が含まれていないかについて、RT-PCR法を用いて検討した。ストレッチストレス負荷の条件については、細胞毒性の少ない合成ゴムを培養床に用い、これを伸縮率8%、負荷頻度毎分6回、負荷時間を、0、4、8、16、24時間の5群に分けて、増殖能はAlamar Blue法で、細胞形態の変化は光顕レベルで評価した。また、負荷後の細胞は回収し、RNAを抽出して、cDNAを調製、RT-PCR法にて、特定の遺伝子の発現を検討した。負荷によって顕著に変化したのはE-cadherin遺伝子の発現で、負荷時間を、16および24時間にのみ認められた。また、増殖能は、8時間以降ほぼ一定に達することも明かとなった。T24は、一般に浸潤性の高い細胞であるが、ストレッチストレス負荷によって、接着力が増加すると同時に、増殖力も増加する結果となったことは、この種の癌の播種を考える上で興味深い結果とも言え、早速、論文投稿を行った。また、この結果は、今後行う予定の、RNA differential dysplay法に際し、陽性コントロールとなることが期待させる。
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