研究概要 |
高血圧患者は勃起不全を発症する確率が高いことが知られているが、それが高血圧により二次的に生じたものなのか、あるいは降圧剤そのものに原因があるのかは現在のところ不明である。本年度は、まず、高血圧患者に発症する勃起不全のメカニズムが、降圧剤を服用する以前に原発性病態そのものに関係しているか否かを調べる目的で、高血圧自然発症ラット(SHR/Izm)と正常ラット(WKY/Izm)を用いて海綿体神経電気刺激による勃起機能を比較検討した。生後16週齢のWKY、8週齢と40週齢のSHRを使用して、ケタミン持続筋注(50mg/kg/hour)下に実験を行った。圧測定ラインとして、陰茎海綿体に23G針を、総頚動脈にシリコンチューブを留置し、両側海綿体神経に微小プラチナ双極電極を装着後、電気刺激装置を用いて矩形波一定電流の反復刺激(上閾値電圧3V,パルス幅5mS,12Hz,1分間)を行った。陰茎海綿体内圧(ICP)と動脈血圧(BP)は、圧トランスデューサーを介してポリグラフで測定した。その結果、ICP/BPは、WKY>SHR8週>SHR40週でそれぞれ有意差が認められた。ICPは、WKY>SHR8週≒SHR40週、BPは、WKY≒SHR8週<SHR40週であった。以上の結果より、高血圧患者では、降圧剤を服用する以前にすでに勃起機能は低下しているが、高血圧ゆえに勃起力はある程度代償されていることが示唆された。そのため、高血圧患者が降圧剤を服用して血圧降下を計ること自体、陰茎勃起の面からはかなり不利になる可能性が高い。
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