これまでに蓚酸カルシウム結石形成ラット腎においてsyndecan-1(HSPG)が組織内で強く発現していること証明し報告してきた。そこで我々は、蓚酸カルシウム結石形成ラット腎において合成オリゴDNAプローブを利用した非放射線性in situ hybridization法にてsyndecan-1(HSPG)のm-RNAの局在を検討した。 プローブはアンチセンスプローブと陰性対照としてセンスプローブを使用し、m-RNAの保存度を検討するため陽性対照として28S-rRNAプローブを使用した。その結果、非結石腎と結石腎との比較において結右腎の特に遠位尿細管上皮において強いシグナルが見られ、syndecan-1(HSPG)の発現が有意に亢進していることが昨年の実験で確認し得た。今年度もさらにこの実験を繰り返しおこなっていったところ、結石形成腎において糸球体の一部(主にたこあし細胞)とさらには近位尿細管の一部にも有意なシグナルが見られた。このことは、これまでわれわれが考えていたsyndecan-1(HSPG)が、結石形成に最も関連していると思われる遠位尿細管および集合管にのみ発現しているのではなく、糸球体や近位尿細管のレベルにおいてもHSPGは結石形成に何らかの関連があるものと思われた。さらにもうひとつの実験として培養細胞を用いた実験をおこなった。MDCK細胞(イヌの遠位尿細管上皮細胞でsyndecan-1(HSPG)はない)と我々が樹立したsyndecan-1(HSPG)m-RNAをMDCK細胞に遺伝子導入しヒトsyndecanを強制発現させる細胞を用いてIn situ hybridization法の実験をおこなった。この結果MDCK細胞の細胞質内にヒトsyndecan-1 m-RNAが発現していることを確認した。今後はこれらの結果をもとに、この物質が結石形成機転に対してどのような役割を担うのかを解明する上で、さらに遺伝子・蛋白レベルでの解析を行っていく予定である。
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