研究概要 |
1.感染に対する産科的介入と早産予防効果に関する研究。単胎妊婦8320例を対象とし,妊娠20-28週の健診時に頸管長,頚管中IL-8値の測定を行った。A群(n=4117)では,IL-8高値(>360ng/ml)例に対して,ポピドンヨード,クロマイ膣錠による膣洗浄を1週間行った。B群(n=4203)ではIL-8高値に対する治療は行わなかった。(1)B群における頚管長短縮例(<25mm)は正常例に比して,早産率が有意に高率であった。しかし、頚管長短縮例に頚管縫縮術を行った群と行わなかった群との間には,早産率に有意な差を認めなかった。(2)B群における子宮頚管中IL-8高値例はIL-8正常例に比して,早産率ならびにpPROM率が有意に高かった。A群では,B群に比して妊娠期間が有意に延長し,pPROM率も有意に低下した。以上より,妊娠中期の頚管長短縮例は早産の危険因子であるが,頚管長が短縮してから治療しても早産を減少できない。一方,頚管中IL-8が高値であることは早産のみならずpPROMの危険因子であり,IL-8が高値症例に対して治療を行えば,これらの率を減少しえることが判明した。2.マウス早産モデルを用いたCOX-2阻害剤の切迫早産治療応用に関する研究。(1)LPS誘導マウス早産モデルにて,COX-2阻害剤;Celecoxib(Cel)投与群の早産率は投与量0.3mg/kgで60.0%, 1mg/kgで36.4%と,非投与群の率(95.0%)に比してそれぞれ有意に改善された。(2)Cel投与群では非投与群に比してLPS投与後4, 10時間の子宮組織中PGF2α,PGE2濃度は有意に低下していた。(3)ラットを用いた実験で,Cel 100, 10mg/kg投与群での胎仔動脈管収縮率はそれぞれ72%, 63%と動脈管の著明な収縮を認めたが,1mg/kg投与では8%の収縮に留まった。(4)Cel投与後に出生した仔マウスの発育,妊孕性は正常であった。以上より,Celは感染誘発早産の治療に有効であるが,早産治療に使用する際には胎児動脈管の収縮に注意する必要があることが判明した。
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