研究概要 |
慢性環境ストレスモデル動物を作成し、ストレスにより脳組織内で産生されるサイトカインの視床下部内での遺伝子発現を分子生物学的手法にて解析した。 1.ストレスモデル動物の作成およびストレスによる行動学的変化の解析 正常発情周期を示す雌ラットを用い、慢性環境ストレス(反復寒冷ストレス)を7日間負荷した。ストレス負荷終了後に採取した胸腺・脾臓・副腎を採取し重量を測定し検討したところ、胸腺および脾臓重量の有意な減少および副腎重量の有意な増加を認めた。これより、本研究で用いたストレスが視床下部-下垂体-副腎系あるいはカテコラミン系の活動性を亢進させ、免疫系にも影響を及ぼすに十分なストレスモデルであることが示された。 ストレス負荷後のラットの発情周期は不規則となり、1週間のストレス負荷期間で発情前期(LH surgeを認める日に該当)を示した動物は20%と有意に少なく、このストレスが視床下部-下垂体-性腺系に何らかの影響を及ぼすことが示唆された。 2.ストレスによる視床下部でのサイトカインmRNA発現量の経時的変化と二次元的分布の解析 ストレス負荷動物および正常動物の脳を摘出し、性中枢、すなわちGnRH産生ニューロンが存在する視床下部視索前野を中心に、その分泌をコントロールしていると言われる弓状核等の関連領域で産生されるTh1型サイトカイン(IL-2)、Th2型サイトカイン(IL-6)、炎症性サイトカイン(IL-1β,TNFα)のmRNA発現を解析した。IL-1βの発現は、視床下部視索前野、前頭前野、視床下部室旁核、海馬、扁桃体、下垂体で有意に強かった。TNFαの発現は、視床下部視索前野、前頭前野、外側視床下野、海馬、扁桃体、延髄、下垂体で有意に強く、最も発現量の多かった部位(海馬)では脾臓での発現量を上回る強い発現を認めた。IL-2, IL-6も脳内で発現していたが、発現量については有意差を認めなかった。
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