研究概要 |
絨毛癌は、妊娠に続発する絨毛細胞由来の悪性腫瘍で,転移症例の予後は不良であり新しい観点からの治療法の開発が絨毛癌の予後改善にとって急務である。 絨毛癌細胞はhCGを過剰に分泌しており、一方で細胞表面にはhCG受容体が発現していることから、過剰に産生されるhCGを介したautocrine/paracrine機構と腫瘍の自己増殖機構との関連性が示唆される。そこで本研究では絨毛癌細胞において、hCGの各サブユニット産生をアンチセンス法にて抑制することで,hCGをシグナルとしたautocrine/paracrine機構を阻害し絨毛癌細胞の増殖を抑制することを試みた。 まず絨毛癌細胞JArよりtotal RNAを抽出し、RT-PCR法によりhCGβcDNAならびにαcDNAを増幅した。この遺伝子断片を3′-5′方向に転写されるように発現ベクターpcDNA3.1に挿入した。カルシウム沈殿法を用い,絨毛癌細胞株JArにpcDNA3.1rCGβおよびrαをそれぞれ形質導入した(reverse transfection)。geneticin G418を培養液中に添加しG418耐性をselection markerとしてクローン化を行ったところ,通常発育阻止濃度250mg/lの条件下において細胞は約2週間で死滅した。次にG418濃度を125mg/lとしたところやはり細胞は約2週間ですべて死滅した。以上のことからhCGβcDNAならびにαcDNAのreverse transfectionによって細胞死が誘導される可能性が示唆され,現在限外希釈法によりクローン化を行っている。今後,培養上清中に分泌されたβ、αサブユニットについてそれぞれに特異的な抗体を用いたWestern dot blot法やRT-PCR法を用いて発現量のスクリーニングを行う予定である。
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