1.母体活動の日内変動が胎児心拍数変動に及ぼす影響を解明する目的で、妊娠36〜39週の正常妊娠8例に対して当科で開発した長時間胎児心拍数記録計、AMI社製actigraph、GMS社製長時間心電計AC301を用いて、母体体動、母体心拍数、胎児心拍数の同時収録を施行、解析した結果 (1)母体心拍数、母体体動、胎児基準心拍数、胎児一過性頻脈の振幅は全ての症例で有意な日内変動を示した。 (2)胎児基準心拍数と母体心拍数は有意な相関を示し、1例を除いて母体心拍数の日内変動位相が胎児基準心拍数の位相より1〜2時間先進していた。母体体動と胎児基準心拍数は8例中6例で有意な相関が認められた。 (3)胎児一過性頻脈の振幅、持続時間、発生頻度と母体体動、母体心拍数の間には有意な相関は認められず、母体活動が胎児一過性頻脈へ及ぼす影響は少ないと考えられた。 (4)母体覚醒時の体動は胎児持続性頻脈発現時の体動と比較して増加を認めず、母体体動が胎児持続性頻脈を誘発するとは考えにくい。 2.二絨毛膜性双胎7例に対して24時間同時心拍数収録を施行し双胎間の胎児心拍数日内変動と胎児持続性頻脈の発現様式の関係を解析した結果、 (1)胎児基準心拍数は全症例で双胎両児で有意な日内変動を示した。 (2)胎児基準心拍数の日内変動は双胎間で高い相関が認められ、その日内変動位相は完全に同期していた。 (3)胎児持続性頻脈の発現は双胎間で同期していなかった。 3.二絨毛膜性双胎1例のlongitudinal studyの結果 (1)妊娠32、34、36週で双胎両児の基準心拍数に有意な日内変動が認められた。 (2)胎児持続性頻脈の出現は全ての妊娠週数で同期していなかった。 以上の結果から胎児基準心拍数の日内変動は母体の日内変動に強い影響を受けていると考えられ、母児間の日内変動の関係が遅くとも32週には確立していること、更に母体の影響が二絨毛膜性双胎では双胎両児に同様に作用している可能性が示唆された。一方、胎児持続性頻脈は胎児由来の因子がその発現に大きく関わっていると推察された。一過性頻脈における日内変動も母体からの影響は受けないと考えられる。
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