研究概要 |
ヒト卵巣癌細胞株HTBOAにおける遺伝子発現をNorthern blot,RT-PCR法により解析した.その結果,HTBOAは血管新生因子であるVascular endothelial growth factor(VEGF)とそのレセプターであるflt-1の両者を発現していることが明らかになった.さらにこの細胞はゴナドトロピン放出ホルモンレセプター(GnRH-R)も発現していた.5-6週齢のヌードマウスに1x107個のHTBOA細胞を腹腔内に接種した実験モデルを使用した。このモデルでは約2週間で高率に血性の腹水を産生した.VEGFを産生するHTBOAが形成した腫瘍は微小血管数が他の細胞に比べて増加していた.マウスに産生した腹水中のVEGF濃度をELISA法により定量したがHTBOAマウスの腹水のVEGFは高濃度であった.さらに腹水中のVEGFの血管透過性亢進能を調べるために、色素漏出による血管透過性の評価としてMile's assayを行い血管透過性が亢進していることを証明できた.また,癌細胞接種週間後よりGnRHアゴニストの投与を開始し対照群と腹水の産生量、腹腔内腫瘍の量、腸間膜への播種病変の数を調べた.コントロール群では8/10のマウスに腹水を産生させたのに対して,GnRHアゴニスト投与群では2/10のマウスにのみ腹水を認めた.このようにヒト卵巣癌の腹水産生にはVEGFが重要な役割を担っていることが明らかになった.現在,HTBOA細胞におけるVEGFの転写制御について解析中である.
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