PP5/TFPI-2の生理機能と癌の浸潤・転移に及ぼす作用に関する研究

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12770924
• 研究機関: 横浜市立大学
• 研究代表者: 宇田川 香織 横浜市立大学, 医学部・附属病院, 助手 (20315815)
• キーワード: PP5 / TFPI-2 / セリンプロテアーゼインヒビター / 癌転移 / 胎盤 / 血液凝固因子 / 絨毛癌 / ヘパリン

研究概要

1.腫瘍の浸潤・転移におけるPP5/TFPI-2の役割について
PP5/TFPI-2を絨毛癌細胞株に強制発現させ、細胞生物学的性格およびヌードマウス移植腫瘍における表現型の変化を検討した.まず,ヒト絨毛癌細胞株JARを用いてPP5/TFPI-2強制発現株を樹立し,RT-PCRおよびWestern法により確認した.この株を用いて増殖曲線を作成し,doubling time,saturation density,plating efficiencyを検討したところ,doubling time,saturation densityは有意差なく,plating efficiencyは強制発現株で上昇していた.次に、強制発現株のPP5/TFPI-2蛋白の分泌の局在(培養上清,細胞内,ECM)を検討たところ,PP5/TFPI-2蛋白の大部分はECMに分布していることが判った.浸潤能を検討するために,in vitroの実験としてmigration assay, invasion assay,(Boyden chamber法)を行ったところ,migration assayは不変,invasion assayでは強制発現株で増加が認められた.In vivoとして,ヌードマウスの皮下へ移植しその組織像を検討したところ,JAR株では皮下移植腫瘍が筋層まで浸潤する像が認められたが,強制発現株では認められなかった.これらのことから,PP5/TFPI-2は,ECMの分解や接着性の増強を介して,癌細胞の浸潤や転移に抑制的に働く可能性が示された.
2.今後の計画について
PP5/TFPI-2の胎盤における抗凝固能について,産科疾患の胎盤および婦人科癌組織におけるPP5/TFPI-2発現について検討する予定.

研究成果

• [文献書誌] K.udagawa: "Specific expression of PP5/TFPI-2 mRNA by syncytiotrophoblasts in human Placentas as revealed by in situ hybridization"Placenta. vol.19. 217-223 (1998)
• [文献書誌] Yohei Miyagi: "cDNA Cloning and mRNA Expression of a Serine Proteinase Inhibitor Secreted by Cancer Calls : Identification as Placenta Protein5 and Tissue Factor Pathway inhibitor-2 "J.Biochem. 116. 939-942 (1994)
• [文献書誌] Yohei Miyagi: "Assignment of the human PP5/TFPI-2 Gene to 7q22 by FISH and PCR-based Human/ Rodent Cell hybrid Mapping Panel Analysis"Genomics. 35. 267-268 (1996)