下丘ニューロンの複合音に対する発火応答を解析した。無麻酔除脳ネコに3周波数の純音を合成した複合音の刺激をあたえ、下丘中心核ニューロンの細胞外記録を行った。個々の純音の刺激では無反応であるのに対し、複合音刺激で特異的に発火するニューロンの存在が確かめられた。これらのニューロンの時間的発火パターンは、複合音のmissing fundamentalに相当する周期に対しphase lockingしていた。さらにフィールド電位においてmissing fundamental周波数の振動が認められ、近傍ニューロン群の同期発火現象の存在が考えられた。またmissing fundamental周波数の純音刺激ではフィールド電位の振動も単一ニューロンの発火も生じなかった。missing fundamental周波数のピッチ知覚をもたらす神経的基盤として、tonotopicな場所コーディングではなく聴覚中枢ニューロン群のmissing fundamental周波数の同期振動による時間コーディングの可能性が示唆された。
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