前庭眼反射および視性眼反射は、ヒト(動物)が地上の重力下において安定した姿勢を維持し、物体を正確に捉える機能に関与する。それらの反射によって生じる眼運動が頭部位置の変化(重力の変化)に対応してどのように調節されるかを解明することが本研究の目的である。 コンピューター制御の3次元回転傾斜刺激装置を用い、ネコの前庭性回転後眼振を誘発した。後眼振出現中に動物の前後あるいは左右方向に傾斜刺激を行い、電磁誘導式眼位測定装置(サーチコイル法)を用いて眼球運動を記録し解析した。平成12年度は、回転後眼振における重力の影響を調べた。前後方向の傾斜では、回転後眼振は傾斜の増加に伴い減衰したが、地上平面に対して水平に保たれていた。左右方向の傾斜では、同様に傾斜の増加に伴い眼振は減衰したが、約±30度の傾斜の範囲で眼振の方向は空間に対して一定であった。ネコにおいては、半規管眼反射は一定の傾斜の範囲内で耳石入力と相互作用し、頭位変化に対応して空間的に眼運動を一定に保つことが可能であることが明らかとなった。 我々は、近年、小脳小節および虫部垂には、回転加速度(半規管)および重力(耳石)の前庭情報と視覚情報が収束することを細胞レベルで明らかにした。小脳小節および虫部垂は、重力変化における前庭眼反射の空間制御に関与している可能性がある。今後、小脳小節および虫部垂の関与について明らかにする予定である。
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