今回は、慢性副鼻腔炎患者14例の手術時に得られた鼻茸細切片より線維芽細胞を分離し、4継体以上で使用した。 (1)Western blotsと免疫組織化学により、鼻茸由来線維芽細胞のSyk発現を観察したところ、一部の細胞で強い発現がみられた。ヒト由来線維芽細胞でSyk発現が確認された報告はなく、鼻茸由来線維芽細胞が線維芽細胞の中でも特殊であることが予想された。 (2)LPSで鼻茸由来線維芽細胞を24時間刺激し上清を回収、細胞外に産生放出されたRANTES量をELISA法にて測定した。それぞれの鼻茸由来線維芽細胞のSyk発現量とLPS誘導RANTES産生量は正の相関を示した。 (3)Syk発現の強い線維芽細胞にSyk-antisenseを加えることにより、Syk発現は抑制され、RANTES産生も阻害された。 (4)Syk発現の弱い線維芽細胞にSyk発現ウイルス・ヴェクターを導入すると、Syk発現は増強し、RANTES産生も有意に亢進した。 (5)LPSを加えた2分後にSyk、続いて10分後にJNK1のリン酸化が最高値を示した。 (6)Syk-antisenseを加えると、JNK1のリン酸化は抑制された。LPS誘導RANTES産生における細胞内情報伝達系で、Sykが重要な役割をしていることが判明した。臨床的に考察すると、これらの結果は、Syk発現の制御による鼻茸治療の可能性を示唆している。
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