研究概要 |
本年度6月にフランスMidi Capteurs社に新型重心動揺計AFP/16の作成を依頼し、10月下旬に自ら渡仏してその調整を行なった。またその際サルペトール病院のMartinerie,Van Quyen両博士、パリ姿勢研究所Dr.Gageyらとともに昨年度作成したカオス理論に基づく非線形ダイナミクス解析法を新型重心動揺計に取り込む作業をおこなった。こうして研究装置は完成し、日本に空輸されて12月の始めに到着した。その後解析プログラムを日本の周辺機器にマッチングさせるため労働省安全研究所の主任研究官である永田氏に協力を以来し、日本における重心動揺波形の非線形ダイナミクス解析が本年度2月に国内で初めて可能になった。本解析法は理論的に極めて難解ではあるが、それにより得られる結果は従来の姿勢研究に全く新しい視点をもたらすものであり、現在予備実験の結果は姿勢研究における国際的雑誌であるGait and Postureに投稿中である。予備実験の結果としては、 1.正常者においては開眼及び閉眼における重心動揺波形のダイナミクスの相違は0.8前後であり、とくに前後方向にダイナミクスの相違が大きくなることが判明した。これは前後方向における姿勢調節機構の神経反射ネットワークがより複雑であることを意味する。 2.前庭機能障害例では、ダイナミクス解析において従来の解析法よりもかなり鋭敏に前庭代償過程を反映し、その結果は臨床症状に一致したものであった。 3.今後さらに正常コントロール数を増やしデータの再現性を確認するとともに、前庭障害例の症例数を増やすことにより予備実験で得られた傾向を検証する予定である。また可能であればメニエール病における眩暈発作の予知に関する研究も行なう予定である。
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