研究概要 |
内リンパ水腫は、内リンパ液が内リンパ管に過剰に貯留した状態である。この原因としては、内耳血管条における内リンパ液の過剰産生と、内リンパ嚢における内リンパ液の吸収障害が想定される。本研究において、内リンパ水腫の形成に内リンパ嚢が如何に関わっているかについて解明するために、内リンパ嚢での物質輸送の動態を検討した。実験動物は、モルモットを使用した。全身麻酔下に内リンパ嚢を露出させ、内リンパ嚢内にガラスキャピラリーを挿入し、内リンパ嚢内にreceptor mediateな取り込みトレーサーとしてカチオン化フェリチン(CF)を、water phaseの取り込みトレーサーとしてマイクロパーオキシデース(MP)を注入した。CF,MPを注入後、内リンパ嚢内皮細胞のCF,MPの取り込み過程を透過型電顕にて観察した。結果は、内リンパ嚢内皮細胞でのCF,MPの取り込みは、内リンパ嚢中間部で認められ、近位部や遠位部では認められなかった。このことは、内リンパ嚢の物質輸送は主にその中間部において行われている可能性を示唆するものである。また、内リンパ嚢中間部においては内皮細胞が円柱上皮であるが、近・遠位部では立方上皮であり、形態学的違いからもその機能の違いが示唆される。今回の結果からは、内リンパ液の恒常性に内リンパ嚢の中間部が何らかの関与をしていると考えられる。今後の課題として、これらの物質取り込みを制御しているシステムについて検討する。
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