研究概要 |
煙草による喉頭癌化学発癌感受性を検討するため、煙草に含まれる代表的な化学発癌物質ベンッピレンの代謝酵素であるP450とGSTの遺伝子多型(CYP1A1,GSTM1)との関連について検索を進めている。以下に現在までの結果を示す。健常人67名の結果はIle/Ile(正常型ホモ)50.7%、Ile/Val(ヘテロ)40.3%、Val/Val(変異型ホモ)9%。喉頭癌患者57例の結果はIle/Ile(正常型ホモ)56.1%、Ile/Val(ヘテロ)43.9、Val/Val(変異型ホモ)3.5%との結果を得ている。肺癌ではベンツピレンの代謝活性が高く、高い発癌性を持つ中間代謝産物を短時間に体内で産生するVal/Val(変異型ホモ)のCYP1A1遺伝子多型を持つ人が罹患しやすいと報告されているが、喉頭癌患者を対象にした結果ではVal/Val(変異型ホモ)のCYP1A1遺伝子多型を持つ人が逆に少ない傾向を示した。P450によって産生された中間代謝産物はGSTにより更に代謝され体外に排出されることから、GSTの活性が低く中間代謝産物が体内に留まる時間が長い場合、発癌の危険が高まると想像される。CYP1A1の検討結果からGSTの活性がより喉頭癌化学発癌感受性と関連すると推測される。GSTM1を先天的に欠損しているグループが発癌リスクが高いとの仮説を立て、今後GSTM1遺伝子の多型について今後検討を進める予定である。
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