平成12年度の実験では家兎麻痺発現モデルにおいて、染色標本ではいずれにも顔面神経の脱髄、変性が認められ、また微小血管の形態変化が観察された。麻痺の程度によりこれらの形態変化には差異が認められた。これらの研究成果を踏まえ、平成13年度はより簡単に個体を扱い得るという理由からラットを用いて同様に鼓室内冷却法により顔面神経麻痺モデルの作成を行った。 1.鼓室内冷却法によるラットの顔面神経麻痺の発現率は40%程度であった。 2.家兎およびラットにおいて、冷却曝露時間により麻痺程度を制御することが可能か否かを検討したが、冷却曝露時間で麻痺の発現程度に差は認められず、いずれも麻痺程度は軽度であった。麻痺発現モデルではバリウムによるmicroangiographyにより微小血管の形態変化を観察したが、いずれも抽出不良であった。更に改善の余地があると思われるが、家兎に比し、ラットが本実験に適していると結論づける根拠は見いだせなかった。 3.塩酸チクロビジンを家兎麻痺モデルに1週間にわたり投与した。非投与群(昨年度の麻痺発現モデル群)に比し、Spalteholz法による血管形態の観察において微小血管形態に明らかな差異は認められなかった。 今後更に麻痺の発現率を向上されること、麻痺程度の制御が技術的に可能か検討すること、神経の再生過程において特徴的な経時的変化が観察されるか、再生過程において影響を与えうる薬剤を検討することなどを以後の検討課題とする所存である。
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