研究概要 |
プライエル反射正常の有色モルモットを用い、全身麻酔下で露出した蝸牛第二回転より、蝸牛内直流電位(endocochlear DC potential ; EP)と内リンパ液と外リンパ液中のCa^<2+>活量とpHをイオン選択性微小電極を用いて調べた。 EPが82.3±0.9mV(n=5)の状態で、内リンパ液イオン組成はK^+144.5±1.6mM/l,Na^+1.95±0.39mM/l,Ca^<2+>170±0.6nM/l,pH7.61±0.09,Cl^-140.5±3.2mM/l(n=5)であった。一方、外リンパ液イオン組成はNa^+163.0±9.4mM/l,K^+5.6±0.3mM/l,Ca^<2+>1.3±0.8mM/l,pH7.39±0.15,Cl^-141.4±0.8mM/l(n=5)であった。外リンパ液イオン組成は従来からの研究報告とほぼ同様の結果が得られたが、内リンパ液イオン組成では、K^+,Na^+,Cl^-のイオン組成は従来からの研究報告と合致するが、内リンパ液Ca^<2+>活量及び内リンパpHは違いが見られた。以前の報告で、内リンパ液Ca^<2+>濃度は2×10^<-5>M/lと非常に高い濃度が報告されていたが、今回の研究では、内リンパ液Ca^<2+>濃度は1.7×10^<-7>M/lと非常に低い濃度が得られた.また内リンパpHも7.6と弱アルカリ性を示し、従来のpH7.4と異なった結果であった。この内リンパ液Ca^<2+>濃度は、細胞内のCa^<2+>濃度として報告されている10^<-7>M/lとほぼ同程度の濃度で、内リンパ液イオン組成が細胞内液のイオン組成と同一傾向を持つ事と一致した結果である。従来のCa^<2+>イオン選択電極によりも感度の高いCa-PVCイオン選択性電極を用いて測定しているので、信頼性が高い内リンパ液Ca^<2+>濃度が測定できたと考えられる。
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