網膜色素変性は進行性の夜盲と視野狭窄、視力低下をきたす疾患で5000人に1人の頻度で発症し、本邦における成人中途失明原因の第3位に位置する失明対策上重要な疾患である。このような病気に対して将来有効な治療法を開発するためには本疾患の遺伝子レベルでの原因解明が最重要課題であると考えられる。これまでの研究成果により本疾患の原因は主として視細胞や網膜色素上皮細胞に特異的に発現する遺伝子の異常によるものと考えられ、現在までにロドプシン、ペリフェリン、アレスチンなどをはじめとして多数の遺伝子異常が発見されてきている。しかしながら、本疾患の原因遺伝子異常は1990年代に予想された種類よりもはるかに多いことが明らかにされてきている。したがって本疾患の原因遺伝子を検索するためには家系調査にもとづく連鎖解析や多くの候補遺伝子を対象とした候補遺伝子検索を進めるのがひとつの解決法であると思われる。本研究では常染色体優性ないし劣性網膜色素変性の原因のひとつとして有力であると考えられる網膜グアニル酸シクラーゼ活性化蛋白質(GCAP1および2)を候補遺伝子として弘前大学眼科および研究協力機関との連携のもとで優性網膜色素変性50家系、劣性網膜色素変性50家系を対象としてまずGCAP2の変異検索を進めた。その結果、2家系(新潟と札幌の家系)の優性網膜色素変性家系においてエクソン3のミスセンス変異を検出した。今後、この変異が本当にこれらの家系における病因遺伝子変異となっているのか否かを検討するため、正常人での変異の存在を検索することと、本家系での臨床像と変異の関連性を追求する予定である。
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