研究概要 |
現在まで、各種悪性腫瘍に対する遺伝子治療の基礎的研究あるいは臨床治験が進められているが、眼科領域あるいは眼内悪性腫瘍に関する研究には乏しい。本研究の目的は、網膜芽細胞腫を主体に、他の致死的な眼科関連腫瘍(眼内悪性リンパ腫、脈絡膜悪性黒色腫、脂腺癌等)に対する遺伝子治療の臨床応用につなげる基礎的データを得ることである。ヒト網膜芽細胞腫培養細胞(Y79)に、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子を導入させた細胞株(Y79-TK)を樹立し、in vitro及びin vivoにおいて、ガンシクロビル(GCV)による抗腫瘍原生を確認してきた(Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.40:265,1999)。現在まで、Y79-TK細胞株として、7つの異なる細胞株を樹立しており、in vitroにて、再度GCVによる抗腫瘍性の差異を検討したと共に、ヌードマウスにおいて、硝子体内及び腫瘍転移モデルとして頭蓋内及び腹腔内にY79-TK細胞及びY79細胞を移入するため、大量の細胞培養を継続中であり、十分な細胞数が得られ次第、in vivoの研究に入る予定である。また、他の致死的眼科関連疾患に対する本研究齲を進める目的で、一例のヒト眼中枢神経系悪性リンパ腫患者において、硝子体手術の際、患者の同意を得た上で、硝子体内に浸潤しているリンパ腫細胞を分離したのち、新たな細胞株の樹立に向け、培養中である。
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