研究概要 |
不死化したヒト角膜上皮細胞cell lineを用いて、紫外線による細胞死のメカニズムについて検討した。紫外線を低容量で照射した場合は主にアポトーシスが誘導され、高容量で照射した後はネクローシスが主体であることを、形態学的に観察した。位相差顕微鏡像では、低容量群の細胞は核の断片化と細胞質の萎縮が主体であったが、高容量群では細胞形態はほぼ温存されていた。二重鎖DNAを染色するpropidium iodide(PI)では、蛍光顕微鏡とフローサイトメトリーにて高容量群に高い染色性が見られた。これは、紫外線照射直後より、高容量群の細胞が死滅していることを示唆した。 アポトーシスであることを証明するため、カスペースファミリーの酵素活性を測定した。低容量紫外線ではカスペース3,8と9がいずれも活性が経時的に上昇し、照射後約4時間でピークを示した。一方で、高容量ではカスペースの活性は検出されなかった。また、アポトーシスに特異的な現象であるDNAの断片化をELISA法にて測定したところ、低容量群で有意に増加が見られた。DNAの断片化は電気泳動においても観察され、紫外線による角膜上皮アポトーシスは容量依存的であることが示唆された。カスペース9は主にミトコンドリア経由で活性化されることが知られている。具体的に、ミトコンドリアの二重膜構造に存在するチコクロームcが細胞質に遊離され、カスペース9を活性化すると言われている。このため、現在ELISA法にて細胞質分画のチトクロームc濃度を測定中である。本実験の結果が揃い次第、論文を投稿する予定である。
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