研究概要 |
目的:細菌感染による眼内炎の際に誘導型NO合成酵素が誘導されNOが生成されることが報告されている。しかしながら、手術侵襲における術後炎症の際のNOの産生についてはまだ確認されていない。我々は手術侵襲によってNOが産生されているか、炎症にどのような影響を与えているのか検討した。 方法:白色家兎を用い、全身麻酔下に硝子体手術及び白内障手術を施行した。前房水を吸引し蛋白をcentricon(Amicon corp.)を用いて除去したあと、NO_3^-濃度をNO_2^-/NO_3^- assay kit-C(Dojindo,Kumamoto)用いて測定した。またNO合成を抑制するL-NAMEと対照としてBSS plus^Rをハミルトンシリンジを用いて術直後に硝子体内に注入し、NO_3^-濃度とその術後炎症に対する影響を比較検討した。術後炎症の評価は前房水中の蛋白量をLowry法を用いて検討した。 結果:術前の前房水中のNO_3^-濃度は4.71±0.21μM(mean±SE)、術後の前房水中のNO_3^-濃度は1、3、24時間後に各7.3±0、9.6±0.35、10.2±1.9μM(n=4,p<0.0001)と有意に上昇した。L-NAME注入群では24時間後に6.89±0.14μMであり、NO合成は有意に阻害された。(n=4,p<0.05)術後炎症への影響を検討するために0、20、100mM/μのL-NAMEを前投与したところ12.9±1.14、12.8±0.14、7.5±1.76mg/ml(n=4,p<0.005)と濃度依存性に前房水中の蛋白量が減少した。またフィブリンの析出も顕眼鏡的に有意に減少していた。 結論:硝子体及び白内障の手術侵襲においてNOが産生されていることが確認され、そのNOの産生はL-NAMEにより有意に減少した。NOの産生を抑制することにより、術後炎症は軽減された。
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