生後30日のラットの脊髄を胸髄の中央部あたり(Th6-7)で2箇所切断し、その間の部分を除去することで、約2mmのギャップを作成した。このギャップに、われわれの施設で開発してきた凍結乾操アルギン酸スポンジを移植(充填)し、閉創した。このラットを2〜8週間飼育し、2週目及び8週目で潅流固定し、免疫組織化学染色、光学顕微鏡、電子顕微鏡を用いて、充填したアルギン酸、脊髄断端、再生した脊髄内軸索を観察した。 免疫組織化学染色では、2週目および8週目で、頭側、尾側とも断端より脊髄内軸索がギャップ内のアルギン酸内に伸長していることが確認された。また、アストロサイトの突起も脊髄断端よりある程度ギャップ内に伸長していた。コラーゲン抗体等を用いた染色では、アルギン酸を移植することにより、ギャップ内の瘢痕組織の侵入を抑制していることが確認された。電子顕微鏡所見では、無髄の脊髄内軸索がアストロサイトの突起、およびシュワン細胞に接しながら伸長している様子、また、希突起膠細胞によりミェリン化されていた脊髄内軸索(中枢型)が、途中からシュワン細胞によりミェリン化(末梢型)されている様子も確認された。 以上のことより、アルギン酸が癩痕組織の侵入を抑制し、切断された脊髄内軸索が伸長するのに良好な環境を提供していることがわかった。また、ギャップ内を伸長する脊髄内軸索はシュワン細胞によりミェリン化された末梢型となることもわかった。 生後30日ラットの脊髄(Th10)後索にEthidium Bromideを注入することにより、脱髄疾患モデルを作成した。またラット胎児(胎生14-16日)の海馬組織を浮遊培養することにより、Nueroshere(神経幹細胞含有)を得た。この、Neurosphereを先の脱髄疾患モデルラットの第四脳室より髄液中に注入し、移植した神経幹細胞の生着、分化を観察した。 移植後3週間で、少量ながら脊髄幹細胞が、Ethidium Bromideにより脱髄された部分に侵入していることが確認された。
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