ヒトの線維芽細胞をウシ由来のコラーゲンで作製したコラーゲンマトリックスに組み込み真皮相当物とし、さらにその上でヒトの角質化細胞を播種、培養し複合型培養皮膚を作製した。この培養皮膚を4週令のヌードマウスの背部に作製した4平方センチメートルの皮膚欠損部に移植し、培養皮膚の経時的変化を観察した。移植後3日目より培養皮膚のマトリックス成分であるコラーゲンスポンジの消失が始まり、さらに移植後7日目よりコラーゲンスポンジの吸収は著明となり宿主側から真皮様構造物の増生が活発化した。この真皮様構造物の出現にともない、これに一致した帯状のフィブロネクチンの蓄積を認めた。しかしこの時期には宿主側よりの微小血管の出現はわずかにコラーゲンマトリックスと真皮様構造との境界部に認めるものの表皮直下への伸長は観察されなかった。また表皮・真皮境界部ではラミニンの蓄積による線状構造の出現を認め基底膜の出現が示唆された。移植後14日目になるとコラーゲンスポンジはほぼ消失し、全体が宿主側より新生した真皮様構造物へ置換された。さらにこの部分は厚さをまし、全域に渡りフィブロネクチンの蓄積像を示した。一方ラミニン染色により、真皮様構造中で微小血管はその数を増してその下方部分では側方にネットワークを形成し、さらに表皮側へ向けてその直下まで垂直方向へ伸長する変化が観察された。また変化にともない表皮・真皮境界部ではラミニンの他、7日目では染色性の弱かったタイプIVコラーゲンの出現を認め基底膜構造の安定化が示唆された。
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