研究概要 |
自己免疫疾患における標的臓器のエストロジェンを介したアポトーシス調節機構を明らかにする目的で,in vitroおよびin vivoでの解析を試みた。in vitroでエストロジェン次乏状態を再現するためにエストロジェンのアンタゴニストであるタモキシュフェンを用いてヒト唾液腺細胞株であるHSG細胞およびマウス初代培養唾液腺細胞にアポトーシスが誘導され,そのアポトーシスはエストロジェンの添加により抑制されることが判明した。また,タモキシフェンによるアポトーシスによりシェーグレン症候群(SS)の唾液腺特異的自己抗原120kDα-fodrinの発現が確認され,さらに,タモキシフェン刺激によりカスパーゼ1,3,9の活性が上昇することが明らかとなった。タモキシフェンによる唾液腺細胞のアポトーシスはエストロジェンレセプターαノックアウトマウスおよびp53ノックアウトマウスを用いると誘導されないことも判明した。in vivoにおける実験では正常C57BL/6マウスに卵巣摘出を施すと唾液腺組織のアポトーシスおよびα-fodrinの分断化が確認された。また,卵巣摘出マウスにα-fodrinに反応するT細胞を移入することにより唾液腺,涙腺に限局するSS様の病変が誘導され,新たな実験的SSモデルが確立された。 一方,エストロジェン欠乏によって誘導される関連遺伝子を同定するために,タモキシフェン処理を施したHSG細胞よりmRNA発現の差異をディファレンシャルディスプレイ法にて検討後,差異バンドのRT-PCR法による増幅,大腸菌へのトランスフォーメーションにより目的遺伝子を抽出し,シークエンス解析を行った結果,細胞増殖および細胞周期関連遺伝子が同定された。今後同定遺伝子の機能解析を詳細に行うことにより,自己免疫疾患の発症における性差の機序を解明し,臨床応用を検討する予定である。
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